F;i↦{n∣n≤i}:N→Poset みたいな directed diagram を考えた時,こいつの colimit は何になるか考えようという話が降ってきたんだけど,圏論弱者で頭が混乱してしまって解けなかったので,色々考えたメモ.
directed colimit
ある圏 C と圏 I からの図式 F:I→C を考える.この時, F の colimit とは, C の対象 colimF∈∣C∣ と cocone μ:F⇒Δ(colimF) の組で,以下の普遍性を満たすもの:
∀φ:F⇒ΔX.∃!f:colimF→X.μ;Δ(f)=φ
ただし, Δ:C→CI は対角関手.
diagram の index が directed set である場合に,それ上の colimit を directed colimit と呼ぶ.とりあえずここまでが導入.
colimit としての N
F;i→{n∣n≤i}:N→Poset のような diagram を考える.射は単純に F(i≤j);n↦n で作れる.こいつの directed colimit は何になるだろう? 直感的には,最終的に N に収束しそうだ.確かめてみる.
まず colimit cocone は μi;x↦x:{n∣n≤i}→N で考えられそうだ.さて, φ:F⇒ΔX に対して, μ;Δ(f)=φ を満たす f:N→X を考えてみる.
つまり任意の f について, f(n)=φn(n) が成り立ち,逆に n↦φn(n) を考えればこれは一意で等式を満たす射ということになる.ここから, N は F の colimit となる.
Cpo での colimit
さて実は本題はここからで, {n∣n≤i} は finite poset でありつまり cpo だ.なので先ほどの F は N から Cpo への図式としても考えられる.この場合, F の colimit は何になるだろう? 問題は, N は cpo でないことだ. N 全体を考えると,こいつは directed set になるが sup を持たないからだ.では, F の colimit は無いのだろうか?
実は, N は cpo では無いのだが N∞=N∪{∞} は cpo になる.こいつに対して Poset での構成を試してみる. N の範囲では同じ話を適用できる.が, f(∞) が一意に決まるかは分からないので, colimit を考えられないように見える.しかし,実はこいつを決められる要素が, Cpo にはある.それが連続性だ.今回の場合 f:N∞→X は連続関数なので,次の式が成り立つ:
f(∞)=f(n∈N⨆n)=n∈N⨆f(n)=n∈N⨆φn(n)
X が cpo なので,こいつは well-defined で sup は一意より, f は N∞ 全域で一意に定めることができる.ここから, F:N→Cpo の colimit は N∞ になる.
Poset と Cpo
ここまで見て,混乱した人はいないだろうか? 僕は当初混乱した. N∞ が Cpo で colimit になれるなら,なぜ Poset では慣れなかったのだろう? もしかして, N と N∞ って poset として同型なのか? とか本気で考えた (そんなバカな話はもちろん成り立たない) .なので,最後に Poset と Cpo で何が違うのか見てみる.
Poset の中で N∞ から N への一意射が作れないか考えてみる.先ほどの話から,問題は f(∞) の定め方にあることは分かるだろう.こいつをどう定めるかが問題になるわけだけど, Poset の射は単調である必要があるので,
∀n∈N.f(∞)≥f(n)=n
を満たす必要がある.ここまでくるとみなさんお気づきだと思うけど, N は上限を持たないので,これを満たすように f をうまく作れないのだ.これが, Poset と Cpo の大きな違いっぽくて, Cpo は directed subset でさえ sup を持てないようなものを除外することで well-defined 性をうまく保証してくれるっぽい.なので,連続性を用いて一意にうまく定めることができるけど, Poset ではそこがうまくいかない,一意射の一意性どころか構成できないというわけだ.
まとめ
これは完全に知らない話だったので,ほへーってなった.また一つ賢くなってしまった (順序理論界隈とかだと常識かもしれないので,無知を晒してしまったとも言う). Cpo は Poset の full subcategory だと無邪気に信じてたが,こうなると怪しそう.埋め込みうまく作る方法あったりするんだろうか? 時間ができたらちょっと考えてみたい.